◆異世界で闇落ち妃になった私は処女のまま正義と戦いあの女に必ず復讐する

◆高1で16歳の憂理(ゆうり)は同級生・愛流(あいる)の罠にかかり呪いをうけ異世界ネイチュへ送られる。その復讐のためにネイチュを支配するアルマ帝国の皇太子アキと形だけの結婚をする。

11.ドーム最後の朝(1)

 ーーー  夜明け前に目覚め、私は与えられたすみかの外に出た。  まだ暗い足元に気をつけながら神殿の前へ行く。  高台の端から見下ろす。  家々はまだ眠っていた。  空が白みはじめる。 「最後の朝寝を楽しむといい」  私はゆっくりとその場にしゃがんだ。  イシュリンは魔力に頼らない生き方を説いており、ドームの中では魔力を使わない生活が見られた。  しかしながら、強い魔力を持つものは相当数いると感…

10.くつがえせない結婚

 ーーー  その頃、神殿の一室では灯したランプを床に置き、イシュリンとワイク、オーヤの三人が車座になり善後策を練っていた。  オーヤはイシュリンに迫る。 「イシュリン、あの女は受け入れずに追い出すべきだ。おれはどうしてもあの女を信用できずにいる。アキは形だけの結婚でも“囚われた妃”を取り返すため必ずここへ来る。あの女はおれたちに災いをもたらす」  ワイクもイシュリンに額を寄せた。 「飛翔と結婚さ…

9.飛翔に処女を捧げたい

「飛翔、離して」  飛翔は私のつながれた両手首をつかみ頭上に置く。  私の左手の薬指には金の指輪が光っている。 「おれと憂理の間には、誰も入れないはずだ」 「やめて」 「やめない」  視線を外さずにいる。 「こんな指輪ひとつで憂理を奪われるなんて、おれは認めない……!」  私の服装はもちろん以前と変わっている。  桜色のシルクのワンピースは首の下で少し切り込みが入り、ネックレスのひと粒のダイヤが…

8.私は復讐を忘れない(1)

 鉄の手錠を自分で外すことはできない。  私はそれで魔力を封じられていることもあり、牢のような場所へ閉じ込められはしなかった。  神殿の横に小さな家を与えられた。和風の建物で畳が敷かれ縁側まであった。  そこに腰掛け足を下ろし、ぼんやりとドームの天井を眺めていると、日が暮れていく。  今朝、私は破壊するために人のいない町を歩いていた。それが、一日の終わりにはドームの中にいる。予想外の展開に気持ち…

7.イシュリンとの対面

 ワイクが裸足になり、神殿の前にある長い木でできた五段の階段を上がり、木の床に立つ。  すだれを両手で分けた。 「イシュリン、“破壊の妃”を連れてきた」  呼びかけられ、その人物が立ち上がった。  こちらへ来る。  私は口の中が乾く。  その人物は、すだれを開け待っているワイクに、 「ありがとう」  と、まず礼を言う。  飛翔がそっと私を押し出す。  前に立たされた。  頭が押さえつけられたよう…

6.家々の間を通って神殿へ

素朴な土の道を私は飛翔について歩く。  畑や家畜の世話をする小屋を過ぎ、石垣に突き当たり、左に折れる。  家々が建ち並ぶ中に入った。  レンガや石や木や土で出来た二階建ての家が両側に続く。  家と家の間は二階部分で紐を渡し、洗濯物が乾かされ、軒先には野菜が吊るされ干されている。  家の前ではテーブルを出し、年寄りの男が数人コーヒーを飲みながら語り合ったり、老女は編み物をして日向ぼっこをする。  …

5.ドームに潜入する

 私は飛翔たちに連れられ無人の町から離される。空を浮遊して移動した。  深い森が足の下になり、さらに進むとうっすらと光る巨大なドームが見えてきた。  そのすぐ手前で地上に降ろされた。  間近で見ると、頼りなさげに薄く張った膜がドームの正体だった。  我々が破壊しようと何度も激しい攻撃を加えたにもかかわらず、どうしても壊せずにいたものがこれだ。  私は飛翔に手をとられ、前後をワイクとオーヤに挟まれ…